以前マッサージのトレーニングで訪れたカリフォルニア州のビッグザーは、ネイティブアメリカンのエサレン族が暮らした歴史深い土地としても知られていました。エサレン族の女性たちは植物と親しみ、薬草のこともよく知っていたそうです。

薬草を使うにあたって、彼女たちは「つながり」が必要だと考えていました。どんなに上手に植えてもその植物とのつながりがなければ育たないし、収穫する際にもつながりがない状態では役に立たなかったといいます。


わたしが薬草を植えはじめたきっかけは、精油を使うようになったことでした。アロマテラピーのスクールで教わり、本を読み、インターネットで情報を集めた後でもっと知りたいと思ったのは、生きた植物のことでした。抽出された芳香成分としての香りではなく、植物そのものを嗅いでみたい、ビンに入った状態ではなく生きた姿を見てみたい、そんな好奇心から種々のハーブを植えてみることにしました。

実際に接してみると、生のクラリセージは精油よりずっと力強く、マージョラムはやわらかく香りました。パルマローザやウインターグリーンは本当にこんな香りなのかと笑ってしまいましたし、カモミールの芳香蒸留水を作ったときは、採れる精油の少なさに驚きました。コンフリーの浸出油では石けんを作り、カレンデュラの浸出油は傷あとに塗りました。

薬草を採取し、利用しようとするとき、その過程ではどの作業でも、植物を感じることになります。何度洗っても撥水するセントジョーンズワートの葉や、土の中から現れるバレリアンの根の香気、バーベインの茎の強靭さや、ネトルに触れた後の手の痛み。それらは学名や薬理作用などの知識とは違い、身体を通してしか知り得ないものでした。


必要な量をまかなえなくなったり、畑から離れた場所へ引っ越したりで、ハーブは今、大半のものを取り寄せて使っています。それでも、一度身近にあった植物は、精油として、あるいはお茶の原材料として手にするとき、今でも顔なじみのような安心感を覚えるのです。
さまざまな薬草と同じ土地で暮らした経験は、親しみとともに、この植物なら力を貸してくれるという信頼のようなものを授けてくれました。これをつながりと呼べるかどうかは分かりませんが、薬草を扱う者として、ひとつの礎になった気がしています。

ここからお送りする、この友人のような薬草たちが、受け取った誰かのいのちの中で、小さな力になってくれることを信じています。